1:経絡の調和

鍼とお灸(温熱治療)は共に経絡理論に基づいており、経絡のエネルギーの流れを調整することが目的です。鍼で経絡に刺激を与え、お灸で温熱刺激を加えることで、経絡全体のバランスを取りやすくなります。これにより、身体全体の調和が促進され、様々な症状に対する総合的なアプローチが可能です。

2:血液循環の増進

鍼が神経や経絡に刺激を与え、お灸が温熱刺激を提供することで、血液循環が促進されます。鍼で血管を拡張し、お灸で温熱を加えることで、組織への酸素や栄養分の供給が増加し、同時に老廃物の排出が促進されます。

3:神経系への総合的なアプローチ

鍼が神経系に直接的な刺激を与え、お灸が温熱により神経伝達物質の調整を促すことで、神経系に対する総合的なアプローチが可能です。これにより、痛みや神経系に関連する様々な不調に対して効果的な治療が期待されます。

4:緊張やストレスの緩和

鍼とお灸の組み合わせは、筋肉の緊張やストレスの軽減にも効果があります。鍼が特定の筋肉にアプローチし、お灸が温熱で筋肉をほぐすことで、身体全体の緊張が緩和され、リラックス効果が得られます。

5:インナーマッスルに直接アプローチ

インナーマッスルやアウターマッスルという呼び方はトレーニングやエクササイズの用語として使われることが多いです。インナーマッスルとは身体の深いところに位置する筋肉の総称で、深層筋のことを指します。インナーマッスルに対してアウターマッスルは、身体の表面に位置する筋肉のことを指し、表層筋のことを指します。

 テレビや雑誌などでもインナーマッスルという言葉を目や耳にする機会は多いと思います。インナーマッスルとして取り上げられているのは体幹の深層筋の場合が多く、インナーマッスルは体幹筋のことを指していると思われがちですが、身体の奥に位置している筋肉の総称がインナーマッスルであり、体幹筋のことだけを指しているわけではなく、上肢・下肢の筋肉の深層筋もインナーマッスルと言われます。

よく言われる体幹のインナーマッスル

多裂筋(たれつきん)

  • 腰背部の筋の中で最も深部にある筋肉で、頸椎から腰椎にかけて細かい束をなした筋肉が連なっています。
    背骨の椎骨同士をつないで脊柱を安定させる作用と脊柱の伸展に作用します。

多裂筋が上手く働かないと背骨 1 つ 1 つを安定させることができなくなり「部分的に背中がそって しまう」「猫背のように背中が丸くなる」といった姿勢の崩れに繋がります。
椎骨の横突起と棘突起の間の溝を埋めるように存在しています。表層の背骨周りには広背筋、脊柱起立筋など大きな筋肉が表層を覆っているので、手技だけで多裂筋を施術するというのは結構大変です。
鍼を使い直接アプローチしてくことでピンポイントに治療が可能です。

腹横筋(ふくおうきん)

  • 腹筋の最も深い部分に位置する筋肉です。
  • 体幹を安定させ、腹部を引き締めて腹圧をかけ、呼吸や排泄をサポートします。

反り腰・猫背など姿勢のバランスが崩れていると正しく機能しくくなります。 腹直筋・腹斜筋(お腹の表面にある筋肉)が固くなってしまうと、腹横筋が表面に引っ張られ、本来の機能が働きづらくなります。 加えて動かしづらい感覚も出てくることもあります。 腰痛がある人はこのお腹周りが硬い人が多いように感じます。
また、腹横筋には内臓を正しい位置に固定するという重要な役割もあります。 腹横筋が弱ると内臓が下がり、それが腰まわりのたるみの原因になります。

横隔膜(おうかくまく)

  • 名称に「膜」とありますが、れっきとした筋肉で、肋骨の下部に位置し横長のドーム状に横たわる薄い筋肉です。
  • 呼吸をする際に使われ、腹式呼吸など横隔膜をしっかり使う呼吸(息を吸うときに縮み、吐くときにストレッチされます)を行うことで、呼吸が深まりリラックス効果などが期待できます。

背中を丸めがちな姿勢を続ける生活が長くなると、肋骨の間や胸の周りにある筋肉が筋膜と癒着することが多くなるので、肋骨の下側から手や鍼を使って刺激を入れ癒着を剥がしていくことが必要です。

骨盤底筋(こつばんていきん)

  • 骨盤の底にハンモック状についている筋肉です。
  • 膀胱や子宮などの臓器を下から支え、排尿や排便をコントロールしています。
  • 特に出産後の女性にとって重要で、骨盤底筋を鍛えることで尿もれなどのトラブルを予防・改善できます。

日常の排尿時に途中で尿を止めて10秒我慢。これを一回の排尿時に数回行うことで骨盤底筋を鍛えられます。

肩関節にあるインナーマッスル

  • 回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)、ローテーターカフと呼ばれる4つの筋肉が肩関節の安定に作用します。

ここが炎症を起こすと腱板炎などになります。
腱板とは肩の筋肉で、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの腱を指します。これらの筋肉は肩の深いところにある筋肉で肩関節の多彩な動きを可能にしています。腱板は猫背、長いパソコン作業、野球やゴルフ、水泳などのスポーツによって炎症を起こすことが多いです。
急性期の場合は、固定やアイシングなどケガの基本的な処置をします。腱板の完全断裂も疑われた場合、専門医の精査が必要となります。鍼灸の適応となるのは不全断裂となります。慢性期に移行した際には、機能回復治療として鍼灸治療が選択肢の一つとなります。鍼灸治療で血行改善し腱の摩擦を軽減し炎症を抑えていきます。

股関節にあるインナーマッスル

  • 人間の体の中で最も大きな関節で、立つ・歩く・座る・走るという日常の基本動作を担っている重要な関節です。股関節が硬いと健康面にも美容面にも大きな影響が生じる可能性があるのでケアしておきたい大事な部位です。

腸腰筋(ちょうようきん)

腰椎から腹腔内を通り、大腿骨の上方へ走る筋肉です。
3つの筋肉の総称であり、「小腰筋(しょうようきん)」「大腰筋(だいようきん)」「腸骨筋(ちょうこつきん)」を合わせて腸腰筋と言います。
わかりやすく言えば、背中から太ももの付け根にかけて、腹の中を後ろから前に向かい、斜めに通っている筋肉です。
又、腸腰筋は、上半身と下半身を1つにつなぐ重要な筋肉でもあります。身体の深いところにある筋肉になります。なので、直接触ってほぐすことが難しい場所でもあります。

衰えると…
デスクワークやテレワークなど、座りっぱなしの生活が長かったり、運動習慣が無くなって運動不足になっていると、腸骨筋の筋力が衰え、柔軟性が低下してしまいます。
腸腰筋の筋肉が衰えると、骨盤の位置が正しい位置に保つことができなくなり、「猫背」や「反り腰」になりやすくなります。

お腹側からでは腹筋の筋肉の後ろにあり、背中側からでは脊柱起立筋というこれまた分厚い筋肉の後ろにあるので、しっかり腸腰筋を緩めるためには鍼治療やハイボルト治療という治療が有効です。

深層外旋六筋(しんそうがいせんろっきん)

梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋の6つの筋肉の総称です。この深層外旋六筋は、骨盤と大腿骨(骨頭)を繋ぎ、股関節を安定させる重要な役割があり、股関節を外旋(外側に回旋)させる筋肉です。

固くなりすぎている方は、上向きで(仰向け)寝た時に足の開き方が45度以上になっています。
正常な角度は45度外に開いている状態です。
使えずに弱ってくると、足の着地の際に膝が内側に入る(ニーイン・トゥーアウト)状態になります。

お尻の表には大殿筋、中殿筋、小殿筋と呼ばれる筋肉があります。深層外旋六筋はその下にあるので、しっかり緩めるには鍼治療が有効です。緩めて楽になったら、トレーニングを定期的に行い極端な「がに股」、「内股」にならないようにメンテナンスをしていきましょう。

これらのインナーマッスルは、体幹の安定やバランスを保つために重要です。トレーニングを行う際には、アウターマッスルだけでなく、これらのインナーマッスルも意識的に鍛えることをおすすめします。

一番つらい状態から抜け出しても、生活習慣からきているような慢性的な不定愁訴は継続治療での状態改善が望まれます。
当初の辛さが10段階の10であった場合、それが0になっても改善が無ければいずれ10に戻ります。

日常生活を快適に過ごしていただける頻度を一緒に探しましょう。定期的なメンテナンスを行い、状態を維持していただけたらと思います。

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