サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、ステビアを比較、長期的な影響は未知数低カロリーの人工甘味料は、人間の腸にすむ微生物の活動を妨げる。
それぞれの化学的構造は大きく異なるにもかかわらず、人工甘味料はどれも似たような効果を持つと、米ロサンゼルス小児病院のマイケル・ゴラン氏は言います。
ダイエットをうたう炭酸飲料を飲んで、砂糖に付き物のうしろめたさやカロリーを気にせずに甘さを堪能する。
それは多くの人が経験したことがあると思います。
しかし、新たな研究によると、人工甘味料はかつて考えられていたほど無害ではなく、それどころか糖尿病や体重増加のリスクを高めるかもしれないのです。
科学者らは以前より、人工甘味料と人間の糖尿病との関連を疑ってきましたが、これまでは実験用のマウスでしか証拠は示されていませんでした。
イスラエルの科学者たちが、同様の試験を人間で行ったところ、人工甘味料は人間の腸にすむ細菌の働きを妨げるだけでなく、食後に血糖値を下げにくくする可能性があることがわかりました。
血中にブドウ糖が長く留まるほど、糖尿病、心血管疾患、慢性腎臓病のリスクは高くなります。
論文は2022年8月19日付けで学術誌「Cell」に発表されました。
「人工甘味料が使われるのは、人がカロリーという代価を支払わずに甘さを味わいたいと望むからです」と、イスラエル、ワイツマン科学研究所の免疫学者で、今回の研究を率いたエラン・エリナブ氏は言います。
「しかし、非栄養性甘味料は人間の体内で何の作用も示さないわけではありません」
人間は誰しも、独自の微生物叢(微生物や細菌の集団)を、腸、鼻、口、皮膚、目などに宿しています。
こうした微生物は、消化を助けるだけでなく、病原体から身を守ったり、免疫系をサポートしたりする役割を担っているのです。
腸内細菌叢の混乱が起こるのは、非栄養性甘味料が、人間にとってはカロリーがゼロ、あるいは少ししかない一方で、一部の腸内細菌にとっては栄養となり、それらを増殖させてしまっているからです。
細菌集団内のバランスが崩れると、場合によっては慢性的な腸の炎症や大腸がんにつながります。
今回の研究では、非栄養性甘味料を摂取してから2週間以内に腸内細菌叢が混乱し始めることが確認されました。
また、糖の代謝にどの程度の影響が及ぶかは人によって異なることも示唆されています。
「これは、こうした人工甘味料が実際に人体にどのような影響を与えているかを示す、説得力のある研究です」と、米ロサンゼルス小児病院のマイケル・ゴラン氏は言います。
米エール大学エールグリフィン予防研究センターの創設者で、栄養学の専門家デイビッド・カッツ氏も同意見とのことです。
甘味料の苦い歴史
人間が生まれつき甘いものを好み、苦い物質を避ける味覚を持っているのは、栄養豊富な食べ物が少なかった時代に、高エネルギーの食べ物を求めるように進化した結果です。
ブドウ糖、果糖、サトウキビ、乳糖などの天然糖質は、消化されて、内臓の働きを助けるエネルギー(カロリーとして測定される)を生み出します。
対して、非栄養性甘味料は甘さがきび砂糖の数百~数千倍に及ぶものもあるが、一般に人の体内では代謝されない。
カロリーがまったくないか、あってもごくわずかなのはそのためです。
最初に商品化された非栄養性甘味料であるサッカリンは、1879年、米ジョンズ・ホプキンス大学でコールタール誘導体の中から偶然発見されました。
これがあれば、人はより楽にダイエットに取り組めると考えたセオドア・ルーズベルト大統領の尽力により、サッカリンは誕生したばかりの米国食品医薬品局(FDA)による禁止を免れました。
FDAが1977年に再び、ラットにおける発がんリスクの疑いを根拠にサッカリンの禁止を試みた際には、米国民は何百万通もの手紙を議会、FDA、カーター大統領に送って抵抗しました。
最終的に、サッカリンを含む製品にはがんに関する警告を表示することだけが義務付けられましたが、その表示義務も2000年に廃止されました。
これは人間はラットとは異なる方法でサッカリンを代謝するため、この物質による発がんリスクはないことが確かめられたためです。
ゼロあるいは低カロリーの砂糖代替品は、世界中で何千種類もの飲料や食品に使用されており、2021年には213億ドル(約3兆円)の利益を生んでいます。
2017年に米国で行われた全国的な栄養調査によると、子供の80%、成人の半数以上が、低カロリー甘味料を1日に1回摂取しているといわれています。
実は肥満した成人は、低カロリー甘味料をより頻繁に使用していたということです。
人工甘味料はどのような影響を及ぼすか
10年以上前から、エリナブ氏は、栄養、腸内細菌、肥満や糖尿病などの一般的な病気の発症リスクの関連性を明らかにし、微生物叢をベースとした精密医療を確立させたいと考えてきました。
2014年、エリナブ氏らは、サッカリン、スクラロース、アスパルテームが、それぞれマウスの血糖値を上昇させ、そのレベルは砂糖を与えられたマウスの血糖値よりも有意に高いことを発見しました。
人工甘味料を与えられたマウスから採取した腸内細菌を、自身の腸内細菌をもたず、人工甘味料を一度も与えられたことのないマウスに投与したところ、その血糖値レベルは、まるで自身が人工甘味料を摂取しているかのように急上昇しました。
そこでエリナブ氏は、同じことがヒトでも起こるかどうかを確かめてみることにしました。
腸内細菌の変化は、果たして血糖値に影響するのだろうか。
エリナブ氏のチームはまず、1375人の参加者の中から、過去にゼロカロリーの甘味料を摂取したことのない120人をランダムに分けて、一般的な非栄養性甘味料4種(サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、ステビア)のうちいずれか1つを2週間摂取してもらいました。
科学者らは比較のため、これらの甘味料を与えられていないプラセボグループも設定し、それぞれの血糖値の反応を比較しました。
まず、4種の甘味料のうちいずれかを摂取し始めて2週間以内に、科学者らは、参加者の腸内細菌集団に明確な変化を認めました。「腸内細菌の構成、機能、それらが血中に分泌する分子に、明らかな変化が確認されました」とエリナブ氏は言います。つまり、腸内細菌が非栄養性甘味料に迅速に反応するということです。
そのうえで、食後の血糖をコントロールする機能にこれらの甘味料がどのような影響を及ぼすかを確かめるため、研究者らは、参加者にブドウ糖飲料を飲ませて血糖値の変化を調べました。
通常、血糖値は15~30分でピークに達し、2~3時間以内に普段の値に戻ります。血糖値がずっと高い状態にとどまる場合、体が過剰なブドウ糖を適切に処理・貯蔵できていない「ブドウ糖不耐症」と呼ばれる状態になっていることが示唆されます。
今回の研究において、スクラロースとサッカリンは体をブドウ糖不耐症へと近づけました。
もしこの状態が継続すれば、体重の増加や糖尿病を引き起こす可能性があります。
アスパルテームとステビアは、試験で摂取したレベルでは耐糖能に影響を与えませんでした。
腸内細菌叢の乱れが血糖値に影響を及ぼすことを確かめるために、科学者らは、参加者の便から採取した糞便微生物を無菌のマウスに投与しました。
これにより判明したのは、血糖値の上昇した参加者から採取した微生物は、マウスの血糖コントロールも弱めたということです。
「腸内細菌と、それらが人間の血流に分泌する分子は、4種の非栄養性甘味料を摂取した参加者全員において大きく変化しました」とエリナブ氏は言います。
長期間の追跡こそしていないものの、今回の研究では、人間の細菌叢が、非栄養性甘味料に対して非常に個人差のある反応を示すことも初めて明らかになりました。
これは、全員ではないにせよ一部の人たちにおいては、人工甘味料によって糖の代謝が混乱させられる可能性があるということです。
「しかし、この研究は、見つかった答えの数よりも多くの疑問を投げかけています」と、カナダ、マニトバ大学の人間栄養学の専門家で、糖尿病患者でもあるディラン・マッケイ氏は指摘しています。
研究の参加者には、過去に非栄養性甘味料を摂取していない人たちが選ばれているため、日常的にそうした甘味料を摂取している人にも同じような血糖コントトールの異常が見られるのか、あるいはある程度の適応があるのかどうかは不明だと、カッツ氏は言います。
また、個々に見られた差異が、遺伝的要因によるものなのか、それとも非遺伝的要因や生活要因によるものなのかもわかっていないのです。
砂糖に切り替えるべきか
一部の科学者は、非栄養性甘味料への短期的な摂取後の腸内細菌叢の変化は、警戒するほどのものではないと考えています。
「さまざまな非栄養性甘味料が、生理的に何らかの影響を及ぼしていると考えるのは妥当でしょう」と、米ミシガン州立大学の内分泌学者カール・ナドルスキー氏は言います。
「こうした結果がどの程度続くのかについては、まだ何もわかっていません」と、マッケイ氏は言います。
「これは非栄養性甘味料に初めてさらされたときに起こることなのでしょうか? その影響は永遠に続くのでしょうか?」
論文の著者ら自身も、微生物群の変化による健康への影響をしっかり評価するためには、さまざまな人工甘味料の長期的な摂取について研究することが必要であろうと指摘しています。
彼らはまた、今回の結果は、非栄養性甘味料の代替としてより多くの砂糖を消費しようという意味に解釈すべきではないと強調しています。
「一方では、砂糖の消費は、肥満、糖尿病、その他の健康への影響に対して、依然として非常に大きな健康リスク要因であり、われわれの発見は砂糖の消費を支持したり、推進したりするものではありません」とエリナブ氏は言う。
「しかしもう一方では、われわれが示した人工甘味料による影響は、健康に対して警戒すべきものであることを意味しています」
「われわれには、甘いものへの渇望に対するよりよい解決策が必要です。個人的には、飲み物を水だけにするのがベストだと考えます」
ということです。
まだ決定的な結果があるわけではありませんが、摂り過ぎは良くない!でも毒は身体がおいしいとも感じる!(脂肪分・糖分など)
節度を持って、暴飲暴食しない!
ということでしょうかね・・・
糖に関しては、摂取すると身体が一瞬元気になるのです。
だからそれを繰り返すと身体が無条件に糖を欲しがるようになります。
タバコ吸う人のニコチン切れみたいな依存症になります。
それをただ甘いものを取ることが癖になっている。
というだけで考えずに、そこから離脱して糖分接種を控えてみる。
というようにすると、よいのではないでしょうか。
自分へのご褒美、多すぎませんか?
はい、きをつけます・・・・・・・・・・